肌色の抽象画

2006年10月21日
季節の変わり目のせいか、疲れ切って積極的に虐めたり虐められたりする気力もなく、ベッドに倒れこんで眠る日々だった。

が、やはり完全にマゾヒストになってしまった彼にとっては、そばにいながらも、乳首を弾かれたり、肌を爪で引っかかれる程度では不満だったらしい。昨夜、風呂上りのわたしの肌に、クリームを塗り込み、マッサージしただけで、わたしが眠り込んでしまったせいか、今日は朝早くから、キスで起こされた。

持ち帰りの仕事も手付かずで、充分以上に眠ったのに、まだだるいわたしは、それでもまだ、彼を虐める気が起きなかった。そのわたしの体を、隅々まで触り、どんどん脱がせながら、舐め回す、彼。途中で、「がまんできない。」とつぶやいて、自分のTシャツを脱ぎ、一方的にわたしに奉仕しているだけなのに、すでにじっとりと汗ばんだ肌を、わたしの上に重ねる。「ああ。」彼の喉から、心地よさげな喘ぎ声が漏れる。

今まで肌を合わせた相手、ほとんどすべてに言われてきたことだが、わたしの肌は、ただ触れているだけ、ただ重なり合っているだけでも、その感触がエロティックなのだそうだ。彼もまた、わたしの肌を気に入ったひとりになったらしく、脚のマッサージをしながら、「あなたのふくらはぎは、うっとりするほど真っ白ですねぇ。」などと言うようになった。

そして、わたし自身も、肌のすべりがよいことが、相手を選ぶ基準になっているので、そうした相手とぴったりとくっつきあって、体の表面で官能を感じることに、喜びを感じる。

男性のなかには、そういった時に、自分が汗をかいていると、なぜか謝る手合いが多い。わたしは、相手が汗をかいていると、そこまでわたしに興奮しているのか、と、ちょっとした優越感に浸りながら、感動しているので、なぜ、男性がその時の汗を謝るのか、よくわからないでいる。

さて、最近のサディストとしての調教の結果、彼は少しばかり言葉責めができるようになった。今朝、受動的にしかする気がないわたしは、その成果を味わう。下着のいやらしさを責められたりしながら、彼の指の動きを味わう。痛くなってきたのでやめてもらい、横に寝ている彼の乳首と腹を触っていたら、彼にねだられる。「背中を、虐めてください。」

うつぶせにさせて、腿の上にまたがり、思い切り噛み付き、引っ掻き、引っぱたく。みるみるうちに、彼の白い背中に、赤い肌色の模様が描かれていく。


−ねえ、痛い?

「気持ちいいです。」

−痛いことされてるのに、気持ちいいんだ?

「…はい。」

−変態(笑)

「はい、変態の、マゾヒストです。あなたの爪が、食い込んでくるのが、たまらなく、気持ちいい…。」


息も絶え絶えな彼の答えを、そこまで聞くと、わたし自身のなかも、また潤ってくるのがわかる。虐められているくせによがっている彼の姿に欲情するわたしもまた、変態だ。

彼の背中の肌色の絵を携帯で撮り、その場で見せる。「ああッ。」と呻いて、また明らかに昂まっているのがわかる。面白い。しかしそれは、実験結果のような面白さで、恋の化学変化を面白がるという、それではない。

恋の化学変化という点では、日増しにのめりこんでくる彼の様子を、厄介なことになるかもしれない、と思っているわたしは、相変わらず性愛の点で、彼を玩具としか思えていない。

だから、「見てるから自分でしなさい。」と命令して、慣れない彼が、やわらかいままで謝っても、とくにどうということはない。これが、普通の恋愛の相手であれば、どうして欲情しないのかと、不機嫌になるはずだが。

終わってみれば、起きてからかなり長い時間、遊んでいたように思っていたが、まだお昼になっていなかった。「おなかが、すいたわ。」というと、彼が「なにか作りましょうか?。」と言うので、トーストにりんごのジャムを塗ってほしいと言うと、パンを焼き、ジャムを塗り、さらにそれをひとくち大に千切って、眠るわたしの口に運んでくる。

こうしたささいな日常で、如何なく発揮される彼の愛情を、深く感じれば感じるほど、友人関係を離れると、彼を性愛玩具としてしか思えない自分を感じる。

まったく愛していないわけではない。むしろ、友人としては愛している。しかし、恋人とは思えない。なぜなら、わたしは彼に恋をしていないからだ。

このことは、いろいろなかたちで彼に言ってきたが、彼は、こう言うだけだった。

「それでも、いいんです。玩具でいいから、そばにおいてください。」

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